1.07.2018

K-POPを聴いてみませんか?《2017年私的11曲》

ここまで読んで下さり、ありがとうございました。

だってそれまでK-POPを意識したことなど1秒もなかった1年前の自分だったら、付き合いで「♡」ないし「いいね!」だけ押しといての内容スルーだったかもしれません。



昨年6月にラジオでTWICE(トゥワイス)の《TT》(発売は2016年10月)を耳にして以来、K-POPに憑りつかれています。

新年になったタイミングで、そろそろ別の誰かに憑依してもらって、私としてはもう少し理性的にK-POPと関係を結びたく、筆をとった次第です。

《TT》は「涙が出ていないだけで今私泣いてるんですよ?」を誘うメロディに反応せざるを得ませんでした。

何度も聴くうち、Donald Fagen 《The Goodbye Look》Metronomy 《The Look》によって緩んでいた涙腺が一気に崩壊しました。

「禁じ手まみれの無手勝流なサウンドがポップスとしての普遍性をもってしまう奇跡」

と、これ以上引用を続けると確実に大反発が予想される評をする方もいらっしゃるようで。

TWICEは日本でもデビューを果たし紅白にも出演しました(2016年紅白での新垣結衣によるわずか6秒の恋ダンスはNHKの受信料滞納問題解消に一筋の光を予感させましたが、加藤一二三によるTTポーズ[3:18]は神武以来の天才ならではの予想だにしない一手でした)。

もちろんのこと日本語バージョンで歌われ、残念でした。

K-POPに惹かれる決定的な理由のひとつは朝鮮語の語感ですから!

単にスタイルのよい可愛いアイドルってだけで、それぞれのキャラが際立ってるってだけで、なかでも日本人メンバーの一人ミナのアイドルらしからぬ涼しい表情がたまらないってだけでTWICEを聴いてるんじゃないかという疑念にはびしっと釘を刺させてもらいます。



以下、2017年にリリースされた曲で特に憑いてた曲をリストアップしていきます。



【お通し4種】



女性ラッパーHeize(ヘイズ)の《Don't know you》。

朝鮮語とラップの親和性を知りました。

M心を満たしきってくれたMVにも感謝します。3分間でこれだけかわいがってくれたら本望です。

2016年にDEANとデュエットした《Shut Up & Groove》は、Heizeのラップの瞬発力が垣間見える、フロア・ライクな一発です。



アイドルグループBlock BのリーダーZico(ジコ)によるソロ作品《Artist》。

作詞作曲を自身で手掛けています。

一聴、キワモノ臭ぷんぷんなのですが、ピザポテト感とでも言いましょうか。癖になります。



女優でもあるIU(アイユー)の《この今(Dlwlrma)》。

キュートな歌声とご機嫌なシャッフルビートによって多幸感が溢れんばかり。

9月に発売された《Sleepless rainy night》も都会的で穏やかなソウルフレーバーが心地よいです。

ふとflex life《寝ても醒めても》が頭をよぎりました。



韓中合作のアイドルグループ、MIXX(ミックス)の《Love Is a Sudden》。

〝シギヘッシギヘッ ナッ シギヘッシギヘッ ノド”

朝鮮語を全く理解できなくとも(文字起こしも不正確で失礼します)、越境的にキャッチ―な掛け声から始まります。

ゆったりとしたビートの上で、けっこうな語数が費やされた歌詞がライドしていきます。

それをラップと呼んでいいのでしょうか?あまりにもナチュラルかつ音楽的に耳に響く言葉の連なり。

それがK-POPでしか味わえないノリを生み出す要因なのかもしれません。

自然と気持ちよく身体を揺さぶられ、かつ、腰にもズンズン効いてくる曲です。

地味な曲ですが、私にとってはK-POPを本腰いれて聴くことになる発火点となりました。

2016年にリリースされた《 Oh Ma Mind 》は、けだるさに恍惚となるダウナー系薬物な1曲です。


【サビ抜き3貫】


サビだと思われる部分、クライマックスだと思われる部分に、ほとんど歌詞が無いけれどメロディやアレンジの勢いでかっさらわれる曲にも幾度か憑かれました。



韓国アイドル第一世代、神話(シンファ)の《TOUCH》。

このサウンドを猥雑ととるかスタイリッシュととるか。

ヘッドホンかイヤホンで、目をつぶって大音量で聴くと吉。

やがて訪れるトリップ感が、脳内コンパスの針を振り回してくれるはすです。



TWICEの対抗馬となるか?新生アイドルグループ、PRISTIN(プリスティン)の《Black Widow》。

照明とカメラワークの演出にクラッとするこちらのTV映像も好きなんですが、ダンサーへの憧憬が強いあまり、友人の娘さんでダンスを習っている小学生のinstagramをフォロー申請するほどのトミオカリアンな私としては迷わず上の動画をチョイス(登美丘さんはTWICEの「Like OOH-AHH」を踊ってみてくれてます)。

サビ突入の〝ッソゲチョヘンザッ!(So get your hands up)"。

英語まで朝鮮語に聞こえてくる始末。

K-POPは両語が違和感なく耳に入ってきます。

同アルバム収録の《WEE WOO》は人に勧めるには勇気のいる、奇妙な味の1曲です。
ロックとダンスミュージックとアイドルとが混ざったキメラっぷりに違和感と好奇心が昂ぶります。



私はアイドルしか聴いていないのでしょうか?

Red Velvet(レッド・ベルベット)の《Peek-A-Boo》。

ボディーブローをくらいながら同時に頬を扇子でペチペチやられる気分を味わいたいならこの1曲です。

始終鳴っているパコピコ音は炭酸泉のように気持ちよく、音の厚みとカワイイ歌声が生み出すギャップがフェティッシュです。

サビの「ピークピーカピーカブー ピークピーカピーカブー」という歌詞は、同秋に発売されたTWICE《LIKEY》の「ビービークリームパパパ リップスティックマンマンマ」と甲乙つけがたい「なんだそれ」歌詞2017年マイ・ベストです。
  

【メイン3品】



2016/17年のサマーソニックにも出演したロックバンド、Hyukoh(ヒョゴ)の《Leather Jacket》。

ロック感受性が乏しい私としては、背負い投げ1本をズバンと決められた曲です。

爽やかな敗北感すら抱かせてくれるシンプルかつキャッチ―なバンドサウンド。

人をくった冒頭からは思いもよらない叙情性が噴出する《Tokyo Inn》 、若々しく躍動する 《2002WorldCup》ゆらゆら帝国に朝貢したい《Surf Boy》を含む1stフルアルバム『23』は充実感たっぷりです。



アイドルグループ、BTOB(ビー・トゥー・ビー)の《MOVIE》。

K-POPお得意の泣きメロに高揚感をトッピング。

動画2分目あたり、英語のラップから韓国語のラップへとスイッチする瞬間、銃弾が我が心の臓を貫いていきました。

SMAPの《SHAKE》のように、アイドルグループが歌ってこそ輝いた曲だと思います。



前述のHeize《Don't know you》も手掛けた、新鋭プロデューサーチームGroovyRoomによる《Sunday》。HeizeとJay Parkをフィーチャーしています。

R&BとK-POPとの幸せな巡り合せを示す好例だと思います。

個人的にはGrover Washington Jr《Just the two of us》の面影がちらつきました。

あなたなら今回紹介した曲たちからどんな曲を思い出しましたか?

そんな話ができることを願っています。


【デザート】



独自の感性が人気を博すアーティスト、Zion.T(ザイオン・ティ)の《SNOW (feat.Lee Moon Se)》。

静穏なバラード。バニラアイス、スプーン一杯分の甘さです。


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以上、お付き合いありがとうございました。

世間的には、K-POPは既に爛熟期を迎えていると感じている人が多勢でしょう。

しかし、この先も常に世界のトレンドを節操なく取り入れポップミュージックに昇華する営みは続くはずです。

半年間K-POPを聴いてみると、思わぬ効用がありました。

それまで全く聴いてこなかった現行の欧米のR&B、HIP HOP、ダンスミュージックにも耳が開いていきました。

どうやら私にとってK-POPの「K」は回春剤の「K」のようです。



※ 今後もお世話になるサイト等のご紹介 ※

週一で韓国国内のチャートをYouTube付きで紹介。私のようなライトリスナーにはちょうどいい。
ひと月に1,2曲の当たりがあればよしとしています。


韓国のHIP-H0Pシーンを掘り下げたディスクガイド/アーティスト図鑑です。
YouTubeのURLも載せる細やかなご配慮に感謝。

こちらにも掲載されている本書の前書きが、韓国ヒップホップの魅力を具体的かつ丁寧に教えてくれます。


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鳥居咲子(ヴィヴィアン)@sakikovivi さんが運営する、韓国ヒップホップに特化したウェブマガジンです。

ジャズ・ミュージシャンの枠にとらわれない菊地成孔さんの視点でK-POPを分析し語る啓蒙企画のアーカイブス。

2011年から続き、昨年の12月が最後の開催だったようです。

菊地さんは前述の『ヒップホップコリア』にも寄稿しています。
そこから一言だけ陰陽、もとい引用して。
じゃ!

〝「韓国のポップミュージック」の可能性は、ワタシがとっくに消費しきっていた「ワールドミュージック」の拡張範囲内に収まるものではありませんでした。何故ならそれは「珍味」ではなかったからです。”